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The Christmas Shoes (TV) クリスマス・シューズ

アメリカ映画 (2002)

10才頃のマックス・モロー(Max Morrow)が主演するクリスマス映画。日本では『裸のサンタクロース』(2000)でしか知られていないが、主演級の映画はこちらの方。受賞はしなかったが、この作品でYoung Artist Awardsにノミネートされているので、彼の代表作と位置付けてもいいだろう。内容的にも、心を揺さぶられる如何にもクリスマスにぴったりの映画で、そのためか、本国ではTV映画にもかかわらず珍しくブルーレイも発売されている。脚本は、意図的な涙腺誘導はされていないが、死と向き合う母と子の姿のシーン、及び、題名にもなっているクリスマス・プレゼントにダンス・シューズを買おうとするシーンは、涙を誘う。

映画に登場するのは2つの家族。1つは、マックス・モロー演じるネイサンのいる3人家族で、父は、小さな自動車修理工場を営み、母は、ボランティアで小学校の合唱サークルの面倒を見ている。もう1つは、仕事中心・向上志向のような若手弁護士の父、その方針に反発し、離婚も視野に入れている母ケイト、そして合唱団で一番上手な娘リリーの3人家族。近くに祖母も住んでいる。元気だったはずのマギーは、風邪だと思っていたら、急性ウイルス性心筋炎だと分かり、しかもそれが重篤化していることが判明。唯一の治療は、心臓移植しかないことが分かる。ショックを受ける父とネイサン。合唱団の面倒をケイトに頼むが、ケイトは夫と衝突、家庭崩壊も近い。ネイサンは、母とケイトの会話から、ダンス・シューズを履いて踊るのが楽しみだったと知り、クリスマスに贈ろうと考える。しかし、母の血液型は特殊で、やっと確保できたドナーの心臓もB型肝炎に感染していて移植できず、近い将来の死を宣告される。ネイサンは、クイリスマス・イブ、母の死期が迫る中、空き缶を集めて稼いだお金を持って店に駆け込むが、レジでお金が足りないことを指摘される。その危機を救ったのが、ケイトの夫の弁護士。面識はなかったが、少年を救ったことで目が覚めた弁護士は、崩壊寸前だった家庭を立て直すことができた。しかし、シューズをプレゼントされた母マギーは、イヴの夜に召されていった。

マックス・モローは、TVを中心に活躍した子役で、ハリウッドの歴代の子役の中でも、最も可愛く、演技も上手な1人だが、何といってもその特徴はグレーと黒の目にある。はっきりと二重になっているため、目が非常に生き生きとして印象的なのだ。ただ、残念なことに日本では馴染みが薄く、この名作も、英語字幕すら付いていないため、ヒヤリングに頼らざるをえない。なお、あらすじは、マックスの家族に焦点を当てて紹介している。それでも、マックスの多彩な表情を紹介しようとして、写真の枚数が多くなってしまった。


あらすじ

映画の冒頭は、本編から15年後、クリスマス(25日)に、雪で覆われた墓地を訪れた男性の独白からスタートする。「普通の人々は、メモリアルデーに墓参をする。だが、母は、クリスマスが好きだった。だから、天候に関わらず、クリスマスには 花を供えに墓地を訪れることにしていた」。そこで、1人の青年に会う。「やあ」。「ここは、寒いですね」。「近所の人?」。「ずっと昔に、離れました」。「メリー・クリスマス」。そして、独白がさらに続く、「信じさえすれば、いくら小さな奇跡でも 人生は変えられる」。
  

冒頭に出てきた弁護士の家庭。その日は、学校の合唱団で娘が歌う日なので、「今夜は来てね、必ず」と妻に念を押されている。弁護士は、今とりかかっている訴訟がいかに大切かを力説し、必死に働くのは家の購入資金を稼ぐためと話す。つまり、聴きに行くつもりはないのだ。因みに、彼が必死になっている “新しい家” には、妻も娘も全く興味がない。その次が、ネイサンの家庭。家の前の道路で、母マギーとネイサンが、ラグビー・ボールで遊んでいる。母の投げたボールが、ちょうど通りかかった弁護士の車に当たってしまう。「ごめんなさい」。「車に当たったろ。どこを見て、投げてる?」。「息子に、ラグビーを 教えてたら、つい…」(1枚目の写真)。「息子さんに免じて… それじゃ」と許してもらえる。この時点では、お互い面識はない。顔を見合わせて、マズったねと笑う2人(2枚目の写真)。この映画では、マックス・モローのコケティッシュな顔を見る機会はほとんどないので、貴重なシーンだ。家に入ると朝食の時間。ネイサンは、子犬が欲しくて、母と新聞広告を見ている。父は、「犬を飼うことは、許さんからな」と先手を打って牽制する。そして、飼えない理由として、死んだ金魚が浮かんだままの金魚鉢を持って来て、「2週間、浮かんだままだ」と責める。ネイサン:「埋めたくなかったの」。父はさらに、「宿題は、全部やったか?」と訊く。ネイサンが自慢げに「ほとんど」と答えると、「先生が、『ほとんど』でいいと?」と意地悪く訊く。「そうだよ」。「そうか。電話で訊くぞ…」。ネイサンは、「分かった」と退散する。要は、無責任だから、子犬は飼わせないという論法なのだ。
  
  
  

学校では、教師のダルトンが、『魔法の靴』という童話を読んで聞かせていた。ネイサンが、破いたノートを丸めて前の席の子にぶつけたのを見咎めたダルトンが、ネイサンを前に呼んで、続きを読ませる(1枚目の写真)。ネイサンの母は、次の合唱練習のため早目に来てクラスを参観していたが、朗読を聞いて一人泣いてしまい、ネイサンをはじめ(2枚目の写真)、生徒達をシラケさせる。「ごめんなさい。私も、そんな靴を持ってたの。ダンスの時だけ履いたの。すごく素敵で…」と弁解する(3枚目の写真)。何でもないようだが、後で、ダンス・シューズと絡む重要な伏線だ。授業のあと、ダルトンは、「なあ、早く資格を取って教壇に立つべきだ、マギー」と勧めるが、「私は、ボランティアが好きなの。特に、音楽は」と断る。
  
  
  

マギーが、コンサートの練習の準備をしている。風邪で辛そうだ。一番歌の上手なリリーが、喉が痛いと訴えるが、歌い始めれば消えると、上手に安心させる。それを聞いていたリリーの母が、「お顔だけは いつも。私、リリーの母です」と自己紹介する(1枚目の写真)。その後の会話で、リリーの母ケイトが、以前、音楽の勉強をしていたと打ち明ける。これも重要な伏線だ。開演時間が迫り、ケイトの祖母も来るが、仕事で忙しい夫は姿を見せない。祖母が、「ごめんなさい。息子の育て方が 悪くて」と謝る。一方、舞台裏では、マギーが心臓に胸を当てて苦しそうにしている。そこに1本の赤いバラを持って現れたネイサン。「頑張って、ママ」と声をかける(2枚目の写真)。「愛してるわ」。「ママ、大好き」。そしてコンサートが始まる。冒頭、マギーが、「素晴らしいニュースがあります。市の要請で、子供たちは中央広場のツリーの前で歌うことになりました」と紹介。そして、リリーのソロ『美しきアメリカ』が披露される。もちろん、リリーの父は不在だ。
  
  

コンサートの後、遅く帰宅した弁護士の夫は、「8時半に来るべきだった。どんなに忙しくても、都合くらい付けられる」とケイトから責められる。一方、マギーの家には夜遅くに医師が訪れていた。往診などしない専門医だ。医師は、単刀直入に、「マギー、検査結果が戻ってきた。良くない。心臓が、正常に機能してない。それが、呼吸が苦しくなる原因だ」と言い始める。そして、「心筋の炎症なんだ。症状は似ていても、風邪じゃない。風邪だと祈ってたんだがね」。さらに、「原因は ウィルスだよ。心筋が破壊され、それが悪化していく」。「どうすれば?」というマギーの質問にも、「私は無力だ。ボストンに行って精密検査を」と宣告される。それを、耳にはさんでしまい、衝撃を受けるネイサン(2枚目の写真)。
  
  

翌朝、弁護士の家では、①新しい家に移ること、②母が製薬会社の面接を受けることに娘が反対している。この夫、すべて自分で決めて、家族の意見は全く無視するタイプなのだ。一方、学校では、マギーが「父兄に、私が下りると 伝えて下さらない?」「医者は、臓器移植センターに 電話したわ。それしか、方法がないの」とダルトンに打ち明けている(1枚目の写真)。夫:「救いは、緊急リストに入ったこと。知らせが入ったら、全速でボストンに直行するんだ」。マギー:「どこへ行くにも、このポケット・ベル持ってるの」と言って器具を見せる。ネイサンのベビー・シッターの件は、ダルトンが、「私が預かる。隣のご夫人(弁護士の祖母)は子供好きで、ココアを出してくれる。一緒にいれば、ネイサンの宿題も監視できる。完璧だろ」と言ってくれる。この人物は、映画の中で一番の好人物だ。場面は変わり、再び弁護士の家。面接に出かけようとしたケイトは、娘が楽譜を忘れたのに気付き、合唱の練習会場に持っていく。そこで、気分の悪そうなマギーを見て声をかける。「マギー? どこか悪いの? お医者様を 呼びましょうか?」(2枚目の写真)。「もう無理。力が出ないの。ケイト、お願いが」。「何でも」。「引き継いで」。「今日の練習を?」。「いいえ、クリスマスのコンサート」。最初は辞退していたケイトだったが、病状を聞き、面接に行かず引き受けることにした。帰宅した弁護士は、面接をすっぽかしたと妻を責め、「私、クリスマス・コンサートを やるの」との発言にも「そんな事は、認めん」と拒否。マギーが深刻な病気だと言っても、「アスピリンでも、やっとけ」。「彼女、心臓移植を待ってるの。心臓移植よ。それで、何も思わないの?」(3枚目の写真)。彼女も、頭に来はじめていた。「これはボランティアなの。マギーが辞めたら、合唱団は解散。娘や他の子たちも、人前で歌う貴重な体験ができなくなる。何で、こんなこと説明しなきゃならないの?」。「他人にやらせりゃいいだろ」。「魔女にでも頼んだら?」。「なぜ、君なんだ?」。「なぜ、私じゃいけないの?」。
  
  
  

夜中に、眠れなくて起きたネイサン。母の部屋に行き、心配そうに見つめ(1枚目の写真)、ベッドに入って抱きつく。母に、「ネイサン、どうしちゃったの?」と訊かれ、「ママの心臓が、動いてるって確かめたかったの」。悲しいシーンだ。翌日、父がガレージにいると、ポケット・ベルが鳴り出し、慌てて家に帰る(2枚目の写真)。学校では、ネイサンが1人残され、ダルトン先生が「今日は、仲良くやろうな」と言い出す。「アイクスリームでも食べに行こう」。「いりません」。「ほんとに?」。「僕に、隠し事してません?」(3枚目の写真)。ネイサンも不安なのだ。
  
  
  

ボストンに急行した夫婦。ドナーは10代の若者だと告げられ、「ああ神様、可哀想な お母さん」と同情するマギー。医師は、「最善を 尽くします」と言ってマギーと病室へ。一方、ネイサンはダルトンに連れられ隣の老婦人の家へ。そこで、今は弁護士になっている息子が、少年時代に活躍したというリトルリーグの記念品を見せられ、レッド・ソックスの野球帽をプレゼントされる。大喜びで、鏡で自分の帽子姿を確認するネイサン(1枚目の写真)。場面は、もう一度、ボストンに戻り、病室で長時間待たされている夫婦のもとに医師が現れる。「悪い知らせです。ドナーの心臓に問題が。血液型は、完全に一致したのですが、B型肝炎に感染していました。お気の毒ですが…」。夫は、必死に、「私達は、どうすれば?」「きっと、他のドナーが。可能性は、あるんでしょ?」と訊く。しかし、医師の返答は、「マギーの免疫機能の低下と 特殊な血液型を考えると、チャンスは… 残念ながら、奇跡的としか言えません」と言う。それは、死の宣告だった(2枚目の写真)。帰宅を決意するマギー。つまり、自宅での死を選択したのだ。
  
  

弁護士の家庭は、ケイトが、「私達、同じ家に住んでる他人ね。ベッドは一つだけど。仕方なくね」という段階にまで来ていた。そのケイトが、コンサートの助言を受けにマギーの家を訪れる。そして、夫のことを「夫と一緒だなんて、遙か昔の話。同じ家に住んでるのを実感するのは、朝の歯磨きの時くらい」。「あなた方、いつまで そうやって暮らすの?」。「これ以上、続けられるか分からない」。そして、話はマギーの方に移っていく。「ジャック(夫)の困ったことは、来るべき心の準備ができてないこと」「全然、分かってない」「可哀想なのは、ネイサン!」と言って顔を崩す(1枚目の写真)。「別れたくない」「2人と一緒にいたい」。悲痛な叫びだ。その時、マギーが帰宅したと聞き、ダルトンがネイサンを家に車で送ってきてくれる。別れ際に、「時々、家に帰るのが 怖いの。もし、ママが、いなかったら…」と打ち明けるネイサン(2枚目の写真)。こちらも深刻だ。マギーとケイトの話はまだ続いている。夫とは社交ダンスで会ったという楽しい思い出話だ。そして、「だから、毎年 記念日には、ダンスに出掛けるの。ダンス・シューズがあったけど、どうなったのかしら? いつも それを履く度に感じたの。すごく特別だと。1年で数時間だけだけど、魔法みたいね」と話す。その言葉が耳に入ったネイサンは、これこそママへの素敵なクリスマス・プレゼントになると喜ぶ(3枚目の写真)。そして、さっそくミニ・デパートまで走って行き、靴売り場で素敵な赤い靴を見つける。「完ぺきだ」。手にとって見て(4枚目の写真)、値段が19.99ドルだと確認する。
  
  
  
  

クリスマスまでに20ドル作らなくてはいけない。ネイサンは父のガレージに駆けつけ、「パパ! パパ! 仕事ちょうだい! 今すぐ。お願い! とっても、重要なんだ!」と必死に頼む(1枚目の写真)。しかし、子犬が買いたいんだと誤解した父は、相手にしない。しかし、捨ててあったコーラの缶を見せ、「ニッケルは、ニッケルだ」〔ニッケル缶はニッケル貨=5セントの意味〕と廃品回収による資金調達法を教えてやる(2枚目の写真)。学校で、ダルトン先生と一緒に歩きながら、捨ててあった缶に気付き、飛びつくネイサン。「これ、すごいの!」。「すごい? 空の汚い缶の どこが?」。「缶1個、5セント。20個集めれば、1ドル。もっと集めれば、もっとお金が。そしたら、ママに買えるの。クリスマスの特別プレゼントが」(3枚目の写真)。ダルトンがこの言葉に心を打たれたのは 言うまでもない。
  
  
  

母に手作りのクリスマス・カードを渡すネイサン。天使の絵が描いてある。「美しいわ。巧くデザインしたわね」(1枚目の写真)。ネイサン:「ママの前にいる天使、気に入った?」。マギー:「ママは天使が好きなの。直に、いっぱい見られるわ」。「ママが?」。「ええ。天国で」。「どうして、神様は、ママを連れてくの?」。「どうしてかは、分からないわ。でも、神様がなさるのは、連れていくのではなくて、受け入れて下さるの、天国に」。「万一の時は、知らせてね。ママが天国に入れるよう、必死でお祈りするから」。「いいえ、神様は ご承知よ」。「いくら払ったら、気が変わるか 聞いてね」。「いいこと、ママを連れてったことで、神様を恨まないように。決して、忘れないでね。あなたが、ママの最大の喜びだったこと。ネイサン、心から愛してるわ」。「行かないで、ママ。お願い、行かないで! 神様、なぜ、僕からママを 取り上げるの?」(2枚目の写真)。「行かなくては ならないの。どうしても」。「お願い、僕も連れてって」。「ネイサン、たとえママが逝っても、ママは、いつも あなたの中にいる… ここよ」とネイサンの胸を触る。「約束だよ」(3枚目の写真)。「約束するわ」。「聞いて、ママ。ママがいて幸せだった。絶対 忘れないから」。母と子の必然の別れを描いた非常に長いシーンだ。マックス・モローの演技は見事で、類似のシチュエーションの『8月のメモワール』のイライジャ・ウッドより上手だと思う。
  
  
  

翌朝、クリスマス・イブの日、電飾が付けっ放しなのに気付きダルトンが隣家を見ると、弁護士の祖母は冷たくなっていた。前日は、あれほど賑やかに騒いでいたのに。一方、マギーを診察に来た医師は、夫に「もう 長くないよ、ジェームズ」と打ち明ける。その直後に、ネイサンがダルトン先生と外に行くと言うので、父はびっくりする。「ここにいたく ないのか?」。「クリスマス・イブだよ、パパ。2人で やることがあるの」(1枚目の写真)。「分かった。早く、戻れよ」。父からすれば、僅かの時間しか残されていないのに一緒にいないとは、というのが正直なところだろう。玄関で、万感の思い込めて抱き合う父と子(2枚目の写真)。ダウンタウンに着くと、先生は、「話したよな、私は近親者を亡くしたことがないって」と話し始める。「ええ」。「嘘なんだ。妻は、11年前 亡くなった。この町に 来る直前だ」。「なぜ、嘘を?」。「心を 閉ざしていたからだ」。「どうして、今 話すの?」。「それは、心を閉ざしてしまったら、悲しみは消えないと悟ったからだ」。「分かりました。ありがとう」(3枚目の写真)。ネイサンを思いやっての発言だったが、この時のネイサンの表情が面白い。さて、ダルトンは、それまでに集めておいた大量の空缶を、前夜、裏路地にばらまいておいた。そこにネイサンを誘導する。その光景(4枚目の写真)を見たネイサンは「わぁ… すごい!」と感激する。「ここ、金鉱だ。1個が5セントで、ここには 100個はあるから… 5ドルになる!」(5枚目の写真)。「たくさんのお金だよ。ほんとに大金だ」。「その大金を使って、何するんだい?」。「ママに、クリスマス・シューズを買います」。「そりゃいい。私にも手伝わせろよ」。本当に、いい先生だ。
  
  
  
  
  

ネイサンが部屋に戻ったのは、もう夜になってから。時間がない。ネイサンは、小遣いと稼いだお金を数えずにポケットに突っ込む(1枚目の写真)。そして、ベッドの母と父を見ると、全力でミニ・デパートに向かった。残された夫婦。「ジャック… 私が 逝った後…」。「分かってる」。「ジャック… 子犬もね」。「信じて欲しい」。「もう一つ。今、ダンスをしたいの(Shall we dance)」。動ける状態ではないので、妻を抱いたまま一人でステップを踏む夫(3枚目の写真)。夫婦の愛情がひしひしと伝わってくる。
  
  
  

ネイサンが、ミニ・デパートに着くと、時間前なのに入口に鍵がかかっている。困惑するネイサン(1枚目の写真)。ドアを必死で叩く。「閉まってちゃ、困るんだ!」「開けてよ!」「お願い!」。そこに、娘へのプレゼントを買いに来た弁護士もやって来て、一緒に叩き、「おい!」と大声で呼ぶ(2枚目の写真)。声が届いて開けてもらい、中に飛び込む。なかなか目当てのシューズが見つからなくて、売れてしまったのかと焦るネイサン。ようやく見つけてホッとする(3枚目の写真)。
  
  
  

次が、この映画で最も重要なシーン。店は、閉店間際で、レジには長い列ができている。しかし、母はいつ死んでしまうか分からない。ネイサンは列の先頭、弁護士の前に割り込む。「ごめんなさい。時間がないんです!」と必死にお願いする(1枚目の写真)。無感動状態の弁護士は、怒るでもなく、「OK」。レジ係は、「割引で19.95」(たった0.05ドル 安くなっただけ)。ネイサンは小銭をたくさん取り出す。うんざりした表情のレジ係。数えた挙句、「ダメ。5ドル55セント足りない」。「え?」と驚くネイサン。「言い方が、悪かったのかな。5ドル55セント足りない。いいかね坊や、お金が足りないんだ。新年になってからおいで。まだ、残ってるさ」。「それじゃ、遅すぎるんです。間に合わない!」(2枚目の写真)と悲痛な表情のネイサン。すごすごと帰り始めるが、弁護士に「なあ、坊や、どうしたんだ?」と声をかけられ、「お金が足りなくて… ママは… 重い病気で…」と言葉に詰まる。落ち着くように言われ、「今夜は、ママの最後のクリスマスで、僕、ママに靴を買ってあげたかった。天国に行く前に」(3枚目の写真)とすすり泣きながら説明する。この言葉に動かされない人間はいないだろう。無感動状態にあった弁護士も、心を打たれ、差額を払い、靴を渡してやる。顔中に笑みを浮かべ、「ほんとに、ありがとう」と箱を受け取るネイサン(4枚目の写真)。それを見て、弁護士の心の中で何かがはじけた(5枚目の写真)。そして、娘へのプレゼントは “物” ではなく、歌声を聴きにいくことだと悟り、何も買わずに店を出る。これが、冒頭の独白の “小さな奇跡” だったのだ。
  
  
  
  
  

雪の降るイブの夜を、家に向かってひた走るネイサン。悲しいが美しいシーンだ。バックに歌が流れる。「♪この靴が、買いたいの ♪ママのために、お願い ♪今夜はクリスマス・イブ ♪そして 靴はぴったり ♪お願い、急いで ♪パパは、時間がないと言った ♪ママは、重い病気なの ♪靴を見れば、ママは微笑む ♪ママを、綺麗にしないと ♪今夜、イエス様に会うから」。家の前では、ケイトに指揮された合唱隊が賛美歌を歌ってくれている(3・4枚目の写真)。
  
  
  
  

「ママ、帰ったよ」と部屋に入って行くネイサン。「僕、靴を買ってきたんだ。天国に行く時の」(1枚目の写真)。靴を受け取り、「こんな綺麗な靴、見たことないわ。履かせてもらえる?」と母(2枚目の写真)。片足ずつ丁寧に履かせるネイサン(3枚目の写真)。「ありがとう」と言って、自分の胸を押さえる母。以前話した言葉、「たとえママが逝っても、ママは、いつも あなたの中にいる」を再確認する動作だ。そして、「忘れないでね」。外では、賛美歌103番『牧人羊を』が始まった。「♪妙なる 御歌は、天より 響きぬ…」。「生きることだけ 考えて」と父。ネイサンは、母に抱きついた。堅く結びついた3人の姿が、そこにあった(4枚目の写真)。
  
  
  
  

一方、外では、賛美歌109番『清しこの夜』が始まり、そこに弁護士の夫が到着する。思わず口ずさむ夫。歌が終わった後、夫婦は向き合う。「友達は、可哀想だね」。「本当に」。夫が現れたことに驚き、「今夜、何が起きたの?」と訊くケイト。「人形を買おうと、ウィルソンの店へ。そしたら、少年に会ったんだ。彼が、目を開かせてくれた」(1枚目の写真)。そして、自分がいかにバカだったかを謝り、許しを請う。その時、マギーの家の明かりが消えた。マギーが逝ったのだ。それを見た、リリーが泣きながら寄って来て、ここにも、ようやく結びつくことのできた3人の姿があった(2枚目の写真)。
  
  

クリスマスが終わり、ネイサンが父から子犬を送られて喜んでいるシーンが挿入される(1枚目の写真)。そして、映画は、最初の墓地のシーンに戻る。別れ際に、青年が声をかける。「あなたは、ここでクリスマスに会った、最初の人です」。「私も同じことを言おうと思ってた」。「じゃあ行かないと、勉強が」。「大学生?」。「医学部です。メリー・クリスマス」。弁護士は、「いい帽子だな」。墓参りにレッド・ソックスの野球帽なので照れて笑う青年(2枚目の写真)。その帽子は、かつてネイサンが弁護士の祖母からもらったものだった。ここで、冒頭の独白がくり返される。「信じさえすれば、いくら小さな奇跡でも 人生は変えられる」。青年が去った後の墓石の前には、真っ赤なダンス・シューズが置いてあった(3枚目の写真)。そして、墓石にはマギーという名と、1985年12月24日という亡くなった日(享年34才)が。あの青年こそ、あの時、自分の人生を変えてくれた少年だった、と気付く弁護士。青年は去ってしまったが、弁護士の顔には心から満足した表情が浮かんでいた。
  
  
  

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